歯を磨くとナゼ 歯周病が予防できるのか? プラークコントロールって?

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今回は、歯を磨く 単純な意味と、深~~い意味をお伝えできたらと思います。
深~~い意味を知ると歯みがきの概念が変わるかもしれません。

最初に質問です。
yes 〇、no X でお答えください m(__)m

質問①

歯を磨くのは、口の中の食べカス を取り除くため?
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答、no X

歯を磨くのは歯垢(プラーク)を取り除くためです。

歯垢という言葉は よく聞くと思います。英語だとPlaque(プラーク)。
テレビのCMとかでも「歯垢を除去して...」とか言っていますよね?

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写真は歯垢を赤く染めだしたものです。
歯にべっとりと付いているのが歯垢です。 この歯垢を取って欲しいんです。
この歯垢...、食べカスに見えますか?  肉 や 魚 とかに見えないですよね? トマトやブロッコリーじゃないですよね?  カレーやラーメンの残骸にも見えないですよね?

食事のあとに、ごはん粒とかが口の中に残っていることがあります。その ごはん粒で歯ぐきや 唇が腫れてきた経験なんて無いと思います。 普通の食べ物で口の中は腫れないです。 もし食べ物で口の中が腫れるのだったら、そんなもの食べていい筈がないですよね。
食べカスで歯周病になることはありません。歯周病の原因は歯垢なんです。

歯みがきの目的は、食べカスを取ることではなく歯垢を取ることです。
歯周病や虫歯は 歯垢が無ければ 絶対に発生しません。
食べカスは、歯垢を取るときに 嫌でも一緒に取れるので どうでもいいんです。

 では、この歯垢(プラーク)とは いったい何でしょう?

質問②

歯垢(プラーク)には、食べ物のすり潰されたものとかが 入っている?
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答、no X

歯垢(プラーク)の中に食べ物は1%も入っていません。
歯垢(プラーク)は、その全部が 細菌です。

よく、歯周病菌 とか 虫歯菌 とか聞きませんか?
人間の口の中には約700種類以上の細菌が住み着いていて、歯垢の1/1000 g(ほんの僅か) の中でも約1億の細菌がいます。逆に言えば、歯垢の1gの中には およそ1000億の細菌がいるんです。

歯を磨くのは 食べカスを取っているんじゃなくて 歯垢、つまりは細菌を取っているんです。

口の中の700種類以上の細菌は、細菌の種類によって違いはありますが、だいたい 1個の細菌が24時間で約10000個に増えます! 毎日、毎日、口の中で細菌は激増しているんです。
この増えた細菌を減らすために我々は歯みがきをしているんです。 食べカスを取るためではありません。
食べカスは食べカス、細菌とは全く違います!
「楊枝で食べカスを取ればいいんだ」
「今日は全く食べなかったから、歯を磨かなくてもいいや」
ということは無いんです。


次の動画は、歯垢を顕微鏡で見たものです。
細菌でいっぱいです。
この動画は 早回しにしている訳ではなくて、実際に この速さで何種類かの細菌は動いています。 そして、この細菌たちが毎日 増殖して10000倍になっているんです。
この細菌を取り除いて欲しい!
これが、歯みがきの目的です。

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つまり、歯を磨く単純な意味 

・口の中の細菌が毎日10000倍に増えるので
  ↓
・歯みがきで 増えた細菌を取り除いて減らしましょう
  ↓
毎日、年間を通して、口の中の細菌の数が 少ない状態でキープしましょう

です。

テレビのCMとかで「プラークコントロール」と言っているのは、増えた細菌を減らそう、細菌の数をコントロールしよう、という この歯を磨く単純な意味で使っているのだと思っています。


次は、歯を磨く深~~い意味 の話です。

質問①、質問②より
歯を磨く目的は、歯垢を取り除く、つまりは、何千億もの細菌 を取り除くこと!
というのが分かったと思います。

では、質問です。

質問③
歯を磨いて、口の中の 歯周病菌を無くすから 歯周病が予防できる?

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答、no X

口の中の細菌は、かなり上手に歯を磨ける人でも1000億は残ると言われています。
歯間ブラシを使わない人は3000億以上、上手く磨けない人に至っては1兆以上の細菌が口の中に残ります。
つまり、頑張って磨いても1000億の細菌が口の中には残るんです。世界の人口が76億~77億人とされているのを考えても、すごい数です!

ところで、

レトルト食品や 缶詰が腐らないのは、気密性と遮光性がある容器で密封してから 加圧加熱殺菌をして無菌状態になっているからです。
ヤマザキパンがカビないのも、工業的に無菌的な環境で製造されて、さらに無菌でのパック詰めをしているためです。ヤマザキパンは 開封しない限りカビないです。
無菌状態だと、モノは腐ったりカビたりしないんです。

ところが、口の中は いくら歯を磨いても無菌には出来ません。歯を磨いて、細菌がゼロになるから歯周病にならないのではないんです。 歯を磨いても 磨いても、必ず 細菌は残るんです。

話 変わって....。

お腹の 腸の中にも細菌っていますよね?  腸内細菌とか呼ばれています。
腸の中には、およそ1000種類、約100兆の細菌がいます。これ、どのくらいの量か分かりますか? 全部で 約1.5kgから2.0kgです。人間の体重の1.5~2kgは腸内細菌なんです。

この腸の中の細菌をゼロにしよう! とか 腸内細菌を減らそう! という話は聞いたことがないと思います。
腸の場合は、腸の中の善玉菌を増やし、悪玉菌を減らして、「腸を健康に保とう」 「腸内環境を良くしよう」などと言われてます。

善玉菌を増やすために、乳酸菌飲料を飲んだり、ヨーグルトを食べたり、腸内のビフィズス菌を増やすために 食物繊維を摂ったり、オリゴ糖を摂ったりしてる人も多いと思います。

腸の場合は、腸内細菌を減らすのではなく 常に善玉菌が優位な腸内環境を保つのがいいんです。

話、戻って....。

口の中も同じなんです。 口の中も腸と同じように 無菌状態には出来ません。口の中には常に1000億以上の細菌がいます。ですが、善玉菌が多く、悪玉菌が少ない状態であれば歯周病は発症しないんです。
700種類以上の細菌がいますが、全ての細菌が歯周病を引き起こすのではありません。歯周病を起こさない善玉菌の方が多いんです。
すでに歯周病に罹っている場合でも、悪玉菌を抑え込んでいる間は 歯周病は進んだりしません。

ある分類方法(Socranskyの分類)によると、口の中の細菌の中で歯周病に関係するとされている細菌は数十種類です。その中で悪性度が高いとされるのが15種類。 さらに、その15種類の中で極悪とされているのが 3種類。この極悪3種類の細菌をまとめてレッドコンプレックスと呼んでいます。

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(Socranskyの分類。右に行くほど悪性度が高い細菌を示している。)


次のは、歯垢の細菌の顕微鏡写真です。

(歯垢1g中に何百種類&1000億の細菌がいるカオスな世界)

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(極悪のP. gingivalis 菌)

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残念なことに、歯周病菌は唾を介して感染するため、 ほとんどの人は 中高年の年齢までに 病原性が高いレッドコンプレックスの細菌に感染して保菌者になっています。一度、口の中でレッドコンプレックスが定着すると根本的に除去するのは かなり難しいです。なので、ほとんどの人はレッドコンプレックスと共に生きていくしかありません。

 

口の中の善玉菌を増やし、悪玉菌を抑え込む方法!

 

もし、レッドコンプレックスの細菌がいても 抑え込んで増殖させなければいいんです。
病原性が高い歯周病菌のグループ(図のオレンジレッド)は ある共通の欠点を持っています。それは、
酸素が嫌い(空気が嫌い)です! 酸素があると死滅して増殖できないんです。
なので、この悪玉菌たちは、歯垢の表面ではなく 空気が遮断される歯垢のの部分にしか出現できません。特に 出現しやすいのは 歯と歯肉の境目の空気が来ないの部分です。
歯周ポケットなどは、更に空気が来ないので 悪玉菌が大発生しやすい場所です。

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(左側は正常な歯肉。右側はポケットに歯垢=細菌が溜まっていて歯周病。)

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上の図の青く示した部分の歯垢=細菌を磨き残すと、その下のポケットの中の歯垢(黄色で表示)には空気が来ません。歯垢の厚みが僅か0.33mm (1mmの三分の一)だけで 空気は遮断されるため、ポケットの中は酸欠になって悪玉菌が増殖しやすくなります。

歯周病予防のために、磨くべき場所は歯と歯肉の境目です!
ここの歯垢を磨き取れれば、空気がいっぱい入り、悪玉菌は増えることが出来ません。善玉菌は酸素(=空気)があっても大丈夫なので、毎日10000倍に増えるのが善玉菌ばかりだと安全なんです。

歯垢がついていても、歯垢の中の細菌が善玉菌ばかりで 悪玉菌が少なければ歯周病は予防できるんです。

(結論)

空気が嫌いで 病原性が高い悪玉菌を減らすには、 歯を磨いて、歯垢を減らして空気の通りがいい環境にしておけばいいんです。

磨く場所を間違える or 磨く技術がない、と効果がありません。

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最初の写真では、歯と歯肉の境目は 歯垢が100%磨き残っています。歯と歯肉の境目は 歯垢でべったり。つまり、歯と歯肉の境目は 細菌で100%です。

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この写真でも 歯の根元の部分は歯垢で覆われています。歯と歯肉の境目が塞がれると 空気も遮断されるので、中は悪玉菌が増殖しやすい環境になってしまいます。
歯みがきで、歯肉との境目が磨けないと歯周病の予防は出来ません。

磨くべきは、歯の歯肉との境目! です。

さらに、

極悪とされている細菌には酸素が嫌い以外にも欠点があるんです。それは、血液(赤血球)がないと増えられないです。

極悪レッドコンプレックスの細菌は栄養素として鉄分が必要不可欠です。鉄分がないと 菌は増殖できません。
しかし、
歯垢が溜まった状態が長く続いて歯肉が炎症を起こし、歯周ポケットの内側から出血して 血液から鉄分が供給されると悪玉菌は大幅に増殖し、歯周病を発症させてしまいます。

なので、

常に歯垢を取り除いて、歯肉に炎症が起きないようにしておくのは大切なんです。

(結論)
歯を磨く深~~い意味。

我々は、口の中の善玉菌が増やし、悪玉菌が増えないようにするために 歯を磨いているんです。 けして、口の細菌をゼロにするのが目的ではありません。 食べカスを取るためでもありません。
つまり、「腸を元気にするために 腸内の善玉菌(乳酸菌、ビフィズス菌)を増やして 悪玉菌を減らす」と 同じような事を口の中でもやりたいんです。
歯垢があっても、その中の悪玉菌の比率が低ければ歯周病は発症しないんです!


プラークコントロールの意味。
歯垢をコントロールしたい! =口の中の細菌を善玉菌が優勢な状態にコントロールしたい! なんです。 そのために我々は歯を磨いているんです。

 

2つのプラークコントロールについて、


プラークコントロールには 日々のプラークコントロールと 年間のプラークコントロールがあると思っています。
日々のプラークコントロールは、毎日の歯みがきです。歯みがきの技術は 上手ければ上手いほどいいです。デンタルフロス、歯間ブラシ、ワンタフトブラシ、など様々な道具も ただ使えばいいのではなく、上手く使えるようになることが大切です。

年間のプラークコントロールは、時々 歯科医院で歯石除去やクリーニングを受けることです。
歯科医院で歯のクリーニングを受けることは、悪玉菌にとっては最悪なことです。
歯科医院では、ポケットの中まで綺麗に出来るので、せっかく増えて集団生活をしていた悪玉菌は激減させられます。 さらに、悪玉菌が もう一回 増えようと思っても 歯がスカッと綺麗になっていて空気の通りがいいため すぐに増えることが出来ません。
悪玉菌が増えるためには、磨き残した歯垢が溜まり続けて 空気が来ない状態が続くことが必要なので、再び 悪玉菌が旺盛になるには1~2か月以上の時間がかかります。
これが、定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受けた方がいい理由です。

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デンタルリンス(マウスウォッシュ)について、

歯垢を取り除く(プラークコントロール)のにデンタルリンス(マウスウォッシュ)効果がありません。一時的に口臭を抑えるという目的なら使用もいいですが、歯周病予防には ほとんど意味がないです。
歯垢(プラーク)は細菌の塊ですが、その細菌群は 水飴のような多糖類に覆われて守られています。こういう状態をバイオフィルムと呼んでいますが、この水飴のようなベトベト物質が非常に強力なんです。

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バイオフィルム
は自然界でも普通に見ることができます。お風呂や、台所の排水口とかのヌルヌルしたものはバイオフィルムです。排水口のヌルヌルしたものは、強い水流とかでは落ちないですよね。洗剤やお湯がかかっても取れません。


歯垢もバイオフィルムの状態になっているので、水流やデンタルリンス(マウスウォッシュ)では全く取れないです。さらに、歯垢の中の細菌はバイオフィルムによって守られているため、イソジンなどの 強い殺菌効果を有する消毒薬からも影響を受けないんです。

イメージとしては、きのこ のナメコもゼラチンの様なヌルヌルで覆われてますが、ナメコを お味噌汁の中で加熱しても ナメコの中に味噌汁は浸透しないですよね。ナメコに お醤油をかけても表面を流れるだけで 中まで浸透しないです。
歯垢のバイオフィルムも同じように、薬液などは バイオフィルムの表面を流れるだけで薬液が中の細菌に作用することはないんです。

バイオフィルムを取るには、擦り取るのが一番です。
排水口などのバイオフィルムであれば、ハイターなどの超強力な塩素系消毒剤で分解させることも出来ますが、これを口でやると口の粘膜が死にます...。
なので、歯垢(バイオフィルム)を取るには歯みがき しかないんです。物理的に擦れればいいので、デンタルフロスや歯間ブラシは もちろん有効です。

終わりに、

腸内細菌のバランスが崩れると、お腹の調子が悪くなったり、糖尿病や動脈硬化などが悪化したり、肌荒れ、肩こりなどの症状が出たりします。

同じように、口の中の細菌によって 全身に悪影響が及ぶことがあります

ですが、全身に悪影響を与える口の細菌は、700種類以上の細菌のうち 歯周病に関係する悪玉菌ばかりなんです。ほとんどの口の中の細菌は身体に問題を起こしません。

悪玉菌が病気の発症と悪化に関係しているもの、として次のものがあります。

・糖尿病
・関節リウマチ
・大動脈瘤
・動脈硬化
・大腸ガン
・食道ガン
・潰瘍性大腸炎
・アルツハイマー病
・早産
・低体重児出産

など、上げていくとキリがありません。

実際の統計でも、歯周病に罹っている方々の方が
・心筋梗塞、 脳梗塞
・認知症
・寝たきり
になる比率が高く、平均余命も 歯周病を発症している方々の方が短いんです。

口の中で悪玉菌が増えないようにコントロールするのは、歯周病的にも全身的にもとても健康的なんです。
鏡で自分の歯を見ながら(重要)、是非プラークコントロールを頑張ってください。 

 歯を磨くのは、
・食べカスでなくて細菌を落としているんだ
・善玉菌が増やし、悪玉菌が出ないような環境を作っているんだ
と思いだすと、歯みがきのモチベーションが上がるかもしれません。


↓↓↓ プラークコントロールに絶対に必要なテクニック!

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