「ボーっと歯磨いてるんじゃねーよ!」 by チコちゃん

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今年も 様々な歯科関係の書籍や雑誌が発行されました。
歯科関係者としては とても喜ばしいと思っています。

堀江氏(ホリエモン)の「健康の結論」の歯科の部分は、前年に書かれた本書の前作にあたる「むだ死にしない技術」より更に洗練されていて、他ではあまり書かれない歯の話も入っていて 一読の価値があります。

クロワッサンの「強いカラダをつくる、歯と口の健康法」は質、量ともに圧倒される内容で ほぼ一冊 歯科の話で占められていました。

「美歯Navi vol.2」のような歯の見た目を特集した雑誌が出てくるようになったのも いい傾向だと思っています。

上に挙げた3冊の他にも 多くの書籍、ネットなどで歯の事が語られているので、一般の人でも 年に何回かは歯の情報を見聞きする機会があると思います。
何年にも渡って 繰り返し繰り返し 情報に触れることで、昔は歯槽膿漏(しそうのうろう)と呼んでいたものが、今では専門用語である「歯周病」の方が耳馴染みになってきていると思います。
ですが、一部の健康に前向きな方々は「歯の健康」にも関心があるのですが、大部分の人は 予防の行動には繋がっていないと思っています。
今回のブログの主旨は「ちゃんと歯を磨いてるだけじゃ最後には入れ歯だよ!」です。

ここからが本題。

様々なネットや印刷物に書かれている次の事柄は 基本的に正しいです。
1・歯を磨きましょう
2・全てを磨き切ることは難しいので 定期的に歯医者に行きましょう

正しいのですが、正しく理解している人は かなり少ないないんじゃないかと思っています。

【1. 歯を磨きましょう 】

歯を磨いているのと磨けているのは大違いです

そもそも、日本人は昔から歯は磨いているんです。江戸時代も磨いていましたし、明治時代には歯磨き粉も市販されていました。
現在の日本で(世界でも)歯を磨かない人ってかなり珍しいですよね?
今の日本の高齢者の方々も昔からずーっと歯磨きはしていたんです。歯を磨かないで生きてきた人なんて殆どいないと思っています。

ですが、何故か 最後は入れ歯になる人が多いんです!
90歳まで生きたら9割の人は入れ歯が必要な状態になります。

子供の頃からずーっと磨いていたのに、多くの歯を失ってしまうんです。
磨いていたのに入れ歯のお世話になる。
歯を磨いても磨いても 歯を失うのは防げなかったという事ですよね?
これが、歯を磨いているのと磨けている の違いです。

歯を磨いていても、実際は磨けないので多くを磨き残す。

現在の若い人たちが真面目に歯を磨いても、完璧に歯を磨ける人は殆どいないので 多くの人が歯を失うでしょう。

「歯を磨いているのと磨けているのは違う」、日本語的にはよく理解できると思いますし 正しいんですが、「だから真面目に歯を磨きましょう!」という結論に持っていくと歯を失うことになると思っています。
真面目に歯を磨いていても、想像以上に歯を磨くのは技術的に難しいので 殆どの人は「歯が磨けない」人なんです。
なので、歯を磨いていても結局 磨き残した部分が多くて歯周病や虫歯の予防が失敗するんです。

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平成28年度 歯科疾患実態調査報告(抜粋)厚生労働省

上の表の「う歯」は「虫歯」の事です。
昔に比べて、歯に関心が高まって来たとはいえ 最新の2016年でさえ
25歳を過ぎたら90%の人が虫歯を経験し、30歳を越えると もう99%の人が虫歯になった事があるんです。
全員、歯は磨いてましたよね?
磨いていたら、虫歯にならない筈です。
でも、99%の人がしっかり虫歯になる!
ただ歯を磨くだけじゃ虫歯の予防は出来ないという事に気がついて欲しいと思います。

でも、虫歯は基本的にいつかは痛くなるので治すチャンスがあるんです。ボロボロになって歯を抜かざるを得ないまで放っておく人もいらっしゃいますが、そういう人は少数派。
ほとんどの人は虫歯になったら治しますよね?
なので、虫歯が原因で入れ歯になる人はあまり多くないんです。

ところが、歯周病は基本的に痛くならない!
痛くなければ、治さない! っというのは感情的にはよく分かります。
99%の人が上手く磨けなくて虫歯になるんだったら、99%の人が上手く磨けなくて歯周病になるんだ! と普通に考えられますよね?
虫歯は1歳でも2歳でもなるので、小中学生だったら一回は歯医者で虫歯治療をされていると思います。
ところが、歯周病の場合、実際の症状(腫れる、歯がグラグラする)が出るのは60歳近くになってからが多いんです。
10代の時から歯周病は始まっているので、歯医者に行かない方々は 40年以上に渡って歯周病を放置しているんです。

総入れ歯(歯が1本も無い)になる原因の99%は歯周病です。ただ歯を磨いているだけでは、総入れ歯になる確率がグンと上がるということです。



【2.全てを磨き切ることは難しいので 定期的に歯医者に行きましょう】

「歯を完璧に磨くのは難しいんだよ!」 と言われたら
『確かに100%完璧に磨くのは難しいと思う。でも気合を入れて一生懸命に磨けば80%くらいは磨けるんじゃないかな?』
とか思いませんか?
ここに 実際の歯磨きとのギャップがあるんだと思っています。

次の表はライオン(株)から発表された
「普通の人はどれくらい歯を上手く磨けるか?」 という表です。
ライオン(株)は単に歯科製品を売っているだけじゃなくて、こういう研究発表も多いのが偉いです。

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この表が示しているのは、
・「歯磨きに自信がある人」と「自信がない人」で、実際の歯磨きの上手さは殆ど差が無い。
8割の人は半分の50%も磨き取れない。
歯磨きに自信がある100人中、完璧に磨けた人は 0人。
歯磨きに自信がある100人中、80%磨き取れる人も 0人。
全員、磨けない! 誰も磨けない!
です。

この世の中のほぼ全員が 完璧な歯磨きは出来ないんです。
電動ハブラシ、デンタルリンス、歯間ブラシ、デンタルフロス、を使っても完璧な歯磨きは出来ないんです。
磨き残しゼロの完璧な歯磨きと言われたら、歯科医師、歯科衛生士、歯磨きマニア、の100人に1~2人くらいしか出来る人はいないと思っています。歯磨きマニアではない普通の人であれば10000人に1人も出来ないと思います。

というより、上の表の4割の人は 約80%を磨き残していて ほぼ磨いていないのと同じなんです。

なので、ほぼ間違いなく全員が磨き残すので 歯医者に行ってクリーニングや歯石を取る処置を受けるべきだと思います。それ以外に歯を綺麗にする方法は無いのですから。

(余談)
プロの僕が 患者さんの歯を完璧に綺麗にするのに、色々な道具や機械を駆使しても15~30分の時間がかかります。プロの歯科医師が 特殊な器材を使っても15分以上の時間がかかるのに、普通に5分間くらいの歯磨きをして ちゃんと磨き取れるわけがないと思っていただけるといいのですが...。



定期的に歯医者に行ってください m(__)m。

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ね! 定期的に歯医者に行く人の方が 歯は残るんです。

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認知症も歯周病と関係があるので、歯が少ない人は認知症になりやすいんです。

 

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歯周病は、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、心臓病、肺炎、etc.に深く係わっているので、予防が出来る人の方が健康で医療費が掛からないんです。
定期的にクリーニングを受けていると30年で約500万円分の医療費が浮くという話もあります。
結局、定期的に歯医者に行くのが 経済的にも得なんです。

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最後に、
雑誌『プレジデント』2012年11.12号、シニア1000人にアンケート調査をして「リタイア前にやるべきだった....」という記事で、
健康について後悔していることの第1位は、「歯の定期検診を受ければよかった」でした。
歯周病は40年かかって悪くなって 60歳近くにならないと症状が出ないので、歯で苦労するのはリタイアした後なんです。


完璧に歯が磨けなくても、歯間ブラシを使うと そこそこ何とかなるので。

hamigaki8020.hatenablog.jp


正しいと思う歯の磨き方を解説しています。
ただ、専門誌やYouTubeを見てもテニスやゴルフ、ピアノや書道がすぐに上手くならないのと一緒で、あくまでも歯磨きは練習あるのみなんです。

 hamigaki8020.hatenablog.jp

 

歯磨きが上手くなるのに、あった方がいいと思うのは歯垢顕示液です。磨けたかどうかなんて、染めて見なければ分からないです。
歯垢顕示液を使って、染まった所を鏡を見ながら磨く!
これが、歯磨きが上手くなる一番いい方法だと思っています。染めるとやる気が出ると思います。


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