ブラキシズム(歯ぎしり、食いしばり)は全員がしています。99%以上の人は既に歯にひびが入っていて、60歳を越えてから必ず歯は折れてしまいます。

f:id:hamigaki8020:20180415205053j:plain

 

最初に結論を書いておきます。

夜、寝ているときは 出来るだけマウスピース(ナイトガード)をしましょう。生涯に渡って自分の歯を保つには、これが最善の方法で これ以外にブラキシズム(歯ぎしり、食いしばり)から歯を守るすべはありません。

20歳以上の人を診てみると、99%以上の人は既に歯にひびが入っています。

寝ているときに、歯ぎしりや 食いしばったりしていますか?
大抵の方は自覚がありません。
「患者の歯ぎしり音の自己申告」を基にした欧米やアジア諸国での調査によると、睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり、食いしばり)の発生率は、小児で10~20%、成人では約5~8%、高齢者で2~3%ということが報告されています。
ですが、これはあくまでも自覚がある患者さんの自己申告の統計で、実は人類は ほぼ全員が寝ているときにブラキシズムを発生させています。


・ブラキシズム(歯ぎしり、食いしばり)の怖さ

実は、一日24時間の中で最も強く咬んでしまうのは夜中なんです。
他人の歯ぎしりの音を聞いたことがありますか? 歯ぎしりをしている本人でも、起きているときに あのような強烈な音は中々出せないものです。
氷や固焼き煎餅のような硬い物を咬むのは 別に問題ないんです。食べ物の硬さを気にする必要は全くありません。例えば、硬い氷を ぼりぼり咬んでも歯は全然 大丈夫ですよね? 全ての硬い食べ物で、歯が割れたり砕けたりする事は無いですよね? 人間の歯というのは、想像以上に固くて丈夫なんです。

ですが、食事中でない時に咬んでしまうと そのとても硬い歯どうしがダイレクトにぶつかってしまいます。食べ物のクッションがないので、衝撃が直接 来てしまいます。

夜中に咬んでしまう力は、女性でも軽く100kgを越えます。男性だと300kgに達する人もいるそうです。手の握力計での平均値が女性で30kg以下、男性で50kg以下なのを考えると いかに強い力で咬んでいるのかが分かります。

この夜中の巨大な力で 何年間も何十年間も咬んでいれば、いくら丈夫な歯とはいえ必ず壊れてしまいます。基本的に歯は、爪や皮膚などと違って新生されないので 永久歯に生え変わったら一生そのままです。つまり、歯というのは消耗品なんです。使ったら減る。力が入れば ひびが入る。割れたら再生しないので そのまんま。


その人その人によって、寝ているときの咬む力に差があることから
以前は、異常な(病的な)ブラキシズムと生理的な(自然な)ブラキシズムに分ける考え方がありました。
・歯の異常な摩耗が認められる
・起きた時の顎の周囲の不快感や疲労感、痛みや顎関節に引っかかりがある
などの症状があると異常なブラキシズム。特に障害が出ていなければ
生理的範囲のブラキシズムとするいう考え方です。
ですが、

生理的なブラキシズム=年齢とともに歯の劣化が続く  です。

 

一昔前は「人生は80年時代」でした。ですが、最近は「人生100年時代」とも言われ始めています。80歳から100歳まで20年間あります。20年です! 今までより20年という長い歳月 歯を保たなければならないんです。

 

 話はそれますが、人間の寿命はこの先どこまで伸びるか予想がつきません。人類がこれまで思っていた事と違って想定外という事態もあるかもしれません。
2015年にNHKで放送された『寿命はどこまで延びるのか』では平均寿命が140歳。2013年には、GoogleはCalico(キャリコ)という長生き研究の会社を設立して、平均寿命は170歳を越え 500歳も夢じゃないと言い始めました。

もし、老化が止めれたり 寿命が極端に伸びたとしてもブラキシズムによる歯の劣化は止められません。あくまでも歯の場合は老化ではなくて劣化なんです。
この劣化が続くと最後には歯が必ず破折します。全部の歯ではありませんが必ず折れてしまいます。

一生で自分の歯を失う原因の第一位は「歯周病」です。虫歯も歯を失う原因の一つではありますが、実は 虫歯だけの原因で歯を失うことってあまりないんです。
虫歯になった歯にブラキシズム(歯ぎしり、食いしばり)の外力が繰り返し加わって、ついに歯が破折して抜歯になるケースがほとんどなんです。虫歯の治療を完了していても神経を取っていたり、元々の虫歯が大きかったりすると やはり継続的な力によって破折してしまう場合も残念ですがよくあるんです。

虫歯でない健全な歯でもブラキシズム(歯ぎしり、食いしばり)によって折れてしまうことが時々あります。折れるというのは、歯の一部が破折して欠けるというのではなくて真っぷたつに割れるという意味です。
この真っぷたつ、60歳を越えてからが多くなります。逆に30代、40代の年齢の方々はブラキシズムがあっても まだ中々 破折までには至らないんです。ブラキシズムがあっても還暦の年齢まで中々歯が折れないためか、歯周病予防や虫歯予防と違って メディアにも大きく取り上げられたりしませんが、このブラキシズムの対策は 実は非常に大切なんです。

 

 ・本当に全員にブラキシズムがあるの?


あります!
鏡を見てください。あと必要なのは強力な光です。スマホのライトでも大丈夫です。
前歯に至近距離から光を当てて、鏡に近寄って歯の表面を観察してください。縦方向のすじ模様のものが見えませんか? もし、見えないなら30秒くらいずーっと見続けてください。そうすると目が慣れてきて発見できるかもしれません。
見えたなら、それが すでに歯に入った ひびです。20歳を越えていれば ほぼ全員の歯に多かれ少なかれ ひびが入っています。前歯に ひびがあれば、当然 より強い力がかかる奥歯にも ひびがあると考えてください。

 

f:id:hamigaki8020:20180415232639j:plain

f:id:hamigaki8020:20180415232655j:plain

f:id:hamigaki8020:20180415232841j:plain

 

写真は典型的な ひびですが、このように何十本も ひびがある人もいますし、短い数本の ひびが見えるだけの人もいます。ひびは、はっきりと見える ひびの他に、歯の内部で ひびが入っているために薄く見える ひびもあります。ひびは、歯の内部や 歯の根元から発生することが多いので必ず先端に ひびがある訳ではありません。

・ブラキシズム(歯ぎしり、食いしばり)を続けていくと


・歯がすり減ります

 

f:id:hamigaki8020:20180415235337j:plain

f:id:hamigaki8020:20180415235619j:plain

f:id:hamigaki8020:20180415235554j:plain


・歯の根元がかけてきます。(クサビ状欠損)
多大な咬む力によって歯の根元の部分に歪みが入って弱くなったあと、研磨剤が入った歯磨き剤を使って、歯ブラシで大きな横磨きをすると このようになります。

 

f:id:hamigaki8020:20180416000258j:plain

 

f:id:hamigaki8020:20180416000408j:plain

f:id:hamigaki8020:20180416000640j:plain

 

・歯が真っぷたつに割れます

 

f:id:hamigaki8020:20180416000755j:plain

f:id:hamigaki8020:20180416000827j:plain

f:id:hamigaki8020:20180416001204j:plain

 

・顎関節に負担がかかります

f:id:hamigaki8020:20180416011328j:plain

 

・なぜ、ブラキシズムは起きるのか?

最近の研究では、睡眠時ブラキシズムは 睡眠中の脳の興奮に由来するもので、睡眠中の一時的な脳の覚醒に伴なって引き起こされるものであることが明らかとなっています。
さらに、睡眠時ブラキシズムは ほとんどが眠りの浅いノンレム睡眠時に発生することが分かっています。
飲酒、筋肉痛、ストレス、などの多くの原因が睡眠時ブラキシズムに絡んでいますが、これらの原因は もれなく睡眠の質を低下させて、眠りを浅くする要因のものばかりです。ここで大事なのは、
歯の咬み合わせや 歯並びは ブラキシズムとは一切関係がないということです。歯の咬合をいじってブラキシズムが改善することはありません!


・ブラキシズムの治療

残念ながら、現時点で確実にブラキシズムを抑制できる治療法はありません
ストレスを軽減させるとか、「咬まない!」という自己暗示をかけるとか、薬物療法とか、色々研究はされていますが、決定打は無いのが現状です。
体調がすぐれないのも、ブラキシズムの発生原因になるので、とにかく、100歳まで風邪ひくな、アルコール摂取するな、心配事は無くせ、というのは到底無理なので、根本的にブラキシズムをしないようにコントロールすることは出来ないと思ったほうがいいです。

 

・じゃあどうするの?

マウスピース(ナイトガード)をしましょう。
マウスピースは 歯や 歯の詰め物、被せた物をブラキシズムから保護することができますし、睡眠中に生じる顎関節への負荷を軽減できる可能性もあります。

難しいので説明は省きますが、短期的にブラキシズムを抑制する効果があるとされる スプリント療法という硬いマウスピースを使う方法もあります。ただし、スプリント療法も全ての患者さんに対して有効であるわけではなく、もし有効であっても効果は短期的なもので、長期間スプリントを使用しているとブラキシズム・レベルはまた元に戻ってしまいます。

f:id:hamigaki8020:20180416225726j:plain

 
マウスピース(ナイトガード)をホワイトニング用のマウスピースにしておくと、ブラキシズムから歯を守るのと同時に歯を白くすることが出来ます。ホワイトニングには、歯科医院などで光を照射して行う方法(オフィスホワイトニング)もありますが、このマウスピースを使用する方法(ホームホワイトニング)が最も優れています。更に、このホームホワイトニングで使用するホワイトニングジェルには抗菌性(ほぼ殺菌性に近い。しかも耐性菌が出ない)があって、虫歯予防やプラーク(歯垢)の抑制効果まであるので、ホントに一石三鳥なんです。
歯の保護+ホワイトニング+抗菌効果

・最後に。

歯を一生 保ちたかったら、歯周病と このブラキシズムの2つのコントロールが最重要です。虫歯は、あまり怖くありません。
人間が歯を失うほとんどの原因は、歯周病とブラキシズムの2つからなんです。
歯周病の最も効果的なコントロールは、定期的(その人の状況によりますが、年に2~6回)に歯科医院で歯石の除去やクリーニング(PMTC)を受けることです。
ブラキシズムのコントロールは、マウスピースをして寝る。これが、最も現実的で安全な方法なんです。
マウスピース、結構すぐ慣れるものです。マウスピースをして寝る方が楽。マウスピースをすると、マウスピースに穴が開いたりするので いかに自分が夜中に咬んでいるかが分かって、マウスピースが無いと安心して寝られないという人もいっぱいいます。私も寝るときは必ずマウスピースをしています。ホワイトニングも出来るし、こんなにいいものはありません。

f:id:hamigaki8020:20180417013722j:plain



20歳以上の99%以上の人の歯にひびが入っている事実は、歯科関係者もあまり認識が薄いと思います。虫歯予防や歯周病予防も大切ですけど、このブラキシズムのコントロールがないと結局 何本かの歯は失われてしまいます。こうした事をもっとメディアが取り上げていただけるといいのですけど...。