食後すぐに歯磨きするのはNGという「間違い」をNHKまでもが未だに放送する不幸。

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2004年にアメリカで出された小さい論文が元になって、一時期
「食後すぐに歯を磨くと歯にダメージを与えてしまうので、少なくとも食後30分 以上経ってから歯みがきをするのが望ましい」という説(間違い)が出回っていたことがあります。
これ、普通に歯科医師をやっていれば騙されないし、医学的にも おかしいんです。
論文そのものは正しいと思うのですが、「食後30分 以上経ってから歯みがきをするのが望ましい」なんて事は書いて無く、何故かそこから話が突然飛躍して、間違った週刊誌の記事、およびマスコミ報道がされてしまいました。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

この論文は、酸性飲料水(スプライト)に浸した象牙質の実験の話で、食後すぐに歯磨きをしたら歯(エナメル質)が傷つくなんて一言も 言っていないんです。
世界中の歯科大学、学会でも「食後の歯磨きで歯が傷つく」なんていう話は出ていません。
ですが、それを(ワザと)曲解して、話がどんどん変わっていって いつのまにか
・「食後すぐはエナメル質の表面が溶けている」(スプライトを飲んでもエナメル質は溶けません)
・「歯磨きは食後30分 経ってからが正しい!」(間違いです)になってしまったんです。

そもそも、食後すぐの歯磨きで、ハブラシのナイロンの毛で歯に傷がつくんだったら、

食べてるときに、歯(エナメル質)がダイレクトに接触するのは何で平気なのか? 
・食べてるときの固い食べ物では 何で歯は傷つかないで平気なのか?

歯磨きは食後30分 経ってからが正しいなら
食後に「せんべいとか、「氷ガリガリ」とかNGですよね?
ナッツ類、かりんとう、
なんかもハブラシより硬いからNGですよね?

食後に楊枝を使うのもNGですよね?

実際、食後すぐに歯を磨いて
歯が傷つくなんて事はないんです。

ところが、
2006年頃から、テレビ番組で「歯のダメージを防ぐため、少なくとも食後30分以上経ってから歯磨きをしたほうがよい」という番組が放映されてしまいました。
更に、2010年4月に日テレの「クイズ!本当にそれでいいんですね!?」が放送され、決定的だったのが 2010年9月のNHKの「ためしてガッテン」でした。これで拡散に拍車がかかってしまいました。

ある言説が科学的裏付けを離れて拡大することは、歯科関係者にとって不本意なことです。
「食後30分後にブラッシングを行うことの科学的根拠は何か?」
「その疫学的根拠は何か?」

とくに学校歯科保健の現場では「給食後のブラッシングをどうすべきか」という混乱が生じてしまい、歯科の各学会が 科学的に検証し議論することになりました。

最初から、有りえない話なんですけど、ちゃんと検証して出したのが次です。

〈各学会の否定見解〉

日本小児歯科学会 (2012年)
http://www.jspd.or.jp/contents/main/proposal/index09.html


日本歯科保存学会 (2013年)

http://www.hozon.or.jp/member/statement/file/opinion_20131211.pdf


日本口腔衛生学会 (2013年)
http://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/file/meet/meet62_meeting4.pdf


この否定の提言があり、それ以降は、すべての歯科大学、大学歯学部の研究者は、「食後30分以上待ってから歯磨きをしないと歯にダメージがある!」を否定しています。

実は、歯磨きは、食後すぐでも、30分以上待ってでも、どっちでもいいんです。

ただ、食後すぐに磨く習慣の人が 歯磨きをする為に わざわざ食後30~40分の時間を測るのが面倒なために、歯磨きの習慣自体をやめてしまうのは もったいないと思っています。
ランチの後に すぐ歯磨きしても大丈夫なんです。

インターネットやテレビは 情報が広くスピーディに伝わるというメリットがありますが
、誤解を招く表現が一人歩きしてしまったり、部分的に強調されたりした表現が一人歩きしてしまうリスクもあります。

無責任な まとめサイトや、歯磨きには あまり熱心でない歯科医師のブログ、などが未だにこの間違った情報を発信しているのは残念なことです。

こんな中、昨年の2018年12月6日に、NHKの「あさイチ」で「歯磨きはいつのタイミングにするのがいいのか?」が放送されました。

「食後30~40分ほど時間をあけてから」を推奨する歯科医師も出演なさっていて、またしても間違い説が放送されてしまいました。

番組の中では、歯医者の間でも意見が分かれているということを紹介していましたが、正確には、意見が二分しているわけではありません。

ほぼ、すべての歯科大学の研究者は、今まで通り「食べたら直ぐに歯を磨きましょう」は問題ないと言っています。
歯科業界の大多数の意見と 大声を出すごく少数の歯医者の意見を、同じレベルであつかわれては...、っとNHKのあさイチには思います。

【今回お伝えしたい事】

今回、食後すぐの歯磨きを勧めいてる訳ではありません。食後に歯磨きをしなくたっていいんです。
大切なのは、歯磨きの時間や回数ではなく 歯磨きの技術を上げるこです。
歯磨きが下手な人は どのみち大量に磨き残すんで、食後に歯磨きをしようがしまいが変わらないんです。

 ほとんどの人が歯磨き出来ない記事はコチラ

hamigaki8020.hatenablog.jp

 

実際に、給食後の歯磨きを実施している小学校と していない小学校で発生する虫歯の数に有意な差はありません。
新しく給食後の歯磨きを取り入れた小学校でも、生徒の虫歯の数は減らなかったんです。
食後に歯磨きをするか しないかは、社会的なエチケットの問題を考えなければ どうでもいいんです。

ネットや、書籍上には様々な歯科の情報が溢れています。
今回の「食後の歯磨き」もそうですが、例えば 歯磨き粉を使う量
「ハブラシの先端に少しだけ」、「2cm以上大量に使う」、あるいは「歯磨き粉は使わないで水だけ」と相反する情報が飛び交っています。
ハブラシの持ち方、歯磨きの方法、歯磨きの回数、なども執筆者によって全く違う情報が発信されていて、これでは、何が正しいのか選択するための基礎知識がないと、 本当に正しい情報を得るのが難しいです。
予防歯科で間違った情報が流れても死ぬ訳じゃないので、どんなに「トンデモ」な話が発信されていてもスルーなことが多いんです。

今回のNHKあさイチの放送の後、これをネタにしたブログが また雨後の竹の子ようにたくさん出てきました...。
インターネットは素晴らしいんですけど、予防歯科において、特に歯磨きに関する情報は本当にカオスな世界になってるんです。

そりゃあ、皆さん分からないよね。

【正しい歯磨きの知識】
・歯間ブラシと フロス(糸ようじ)を必ず使う
・歯垢顕示液(磨き残しが染まる)を使って練習するのが最も上手くなります
・歯磨き粉の量は多い方がいいです(フッ素の効果で虫歯になりにくくなる)
・完璧に歯を磨くことは出来ないので、時々 歯医者でクリーニングを受けてください m(__)m

 

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